アパートバブル終息の始まり?残高は22兆円超

 相続税対策と低金利を背景にアパートの新設が進み、特に、地域金融機関は日銀のマイナス金利で稼げない分、収益の穴埋めで一斉にアパート融資に動きました。
 また、建築業界も、サブリースシステムで、「30年間賃料が保証されます。」と、積極的に建設をPR。その結果、賃貸業に素人の方が、アパート経営に参入しました。建設目的が、節税対策で、需要と供給のバランスを無視したケースが多く見られていましたが、最近は、約束していた賃料が見込めない等のクレームから一部では、裁判騒ぎにもなっています。

 このブーム、国土交通省の調べによる貸家着工の減少から「アパートバブルに終息の兆し」と見られているという記事も出てきています。

「アパートバブル」に一服感が漂っている。国土交通省によると、貸家の新設着工戸数は2016年2月以降、16か月連続で前年同月を上回っていたが、17年6月に減少。8月までの3か月連続で前年同月の実績を下回った。
その一方で、全国銀行協会が2017年10月19日に公表した、加盟する116行のアパートローンの残高は、7月末時点の合計で、前月末からほぼ横ばいの22兆5741億円。地方銀行は前月と比べて増えたが、都市銀行や第二地方銀行は減らした。
全銀協の調査によると、銀行のアパートローン残高は2017年7月末時点の合計で22兆5728億円。このうち、地銀64行では前月比0.4%増の11兆2813億円だった。その半面、都市銀行等は0.2%減の8兆1969億円、第二地銀41行は0.1%の3兆958億円だった。
マイナス金利の影響や相続税対策、加えて企業向け融資の伸び悩みを背景に、銀行は地銀を中心にアパートローンを積極的に推進してきた。それもあり、貸家(アパート)の新設着工は2年近く高い伸びが続き、「アパートバブル」の様相を呈していた。
その半面、最近はアパートの空室が目立ちはじめたことで、銀行の行き過ぎた融資が指摘され、金融庁が監視を強化しはじめたところ。その効果が表れているようだ。
国土交通省が9月29日に発表した8月の貸家の新設着工戸数は、前年同月と比べて4.9%減の3万4968戸となった。内訳をみると、民間資金による貸家は 3万2455戸(3.6%減、3か月連続の減少)、公的資金による貸家が2513戸(19.0%減)。首都圏では埼玉を除く1都2県で前年同月の実績を下回った。2017/10/23 J-Castニュース

 また、地域金融機関は「節税効果」を強調し、将来の空室リスクを十分に説明していない。と金融庁は「顧客本位の業務運営」を求めており、カードローンと同様に一連の行きすぎた融資を看過できなくなっている状態と思われます。

 すでに、一部地方では、空き室対策として、数年間の賃料引き下げや、数か月無料の「フリーレント」のサービスも出てきています。今後益々、借家人の募集競争が激しくなる可能性があります。

 総務省によれば2013年度の国内の空き家は、820万戸、総住宅数の13.5%でした。話題の「未来の年表」によれば、人口減少により2033年には、3戸に一戸が空き家になると予測されています。

 貸家需要があるのであれば、アパートローンの需要もあって然るべきなのでしょうが、「節税対策」の名目で需要と関係なく貸出だけが突出する事態は「バブル」という表現があてはまるのではないでしょうか。