日本のキャッシュレス化事情

東京オリンピックを控え、国の産業管轄省庁である経産省は「キャッシュレス化」を盛んに叫んでいます。
そもそも、キャッシュレス化って、誰のために、何の目的に、叫ばれているのでしょうか。

来年度以降、ラグビーワールドカップや東京オリンピック等、外国人観光客の来日急増イベントを控え、経産省は、外貨による日本経済活性化を目論んでおり、財政再建が税収増加にも結び付く以上、国を挙げて訪日外国人のおもてなしに力を入れたいのが本音です。そのため、接客業の国際基準化が必要であり、民泊制度や喫煙飲食店の制限、そして外貨決済の自由度を上げる目的に「キャッシュレス化」が叫ばれているわけです。

つまり、国のための、税収増化の目的に、キャッシュレス化が叫ばれているのです。

では、訪日外国人は、現在そんなに決済に不自由しているでしょうか?また、日本人は、キャッシュレス化の対象に含まれていないのでしょうか。

まず、訪日外国人の決済に多く使われているのが、ご存じVisa・Master・Amex等のクレジットカードです。
その利用可能店舗は、20年前に比べると飛躍的に増加しており、まったく訪日外国人の渡航中の不自由はなくなっています。
代表的なところでは、マクドナルド等のファーストフード店、セブンイレブン等のコンビニ、映画館やタクシー、鉄道切符も窓口でなら購入可能となりました。

それなのに、「キャッシュレス化」を叫ぶ理由はどこにあるのでしょうか。

一つは、海外の現金決済比率が50%前後まで減少している状況下、日本はまだ80%以上が現金決済のままです。
これは、日銀紙幣の信頼性、偽造防止技術によるところと、お店が支払っているカード決済手数料の料率が、日本はやや高い点が挙げられます。
ただ、決済方法のフルラインナップを用意しているコンビニでも、現金決済がまだ50~60%ある点を見ると、日本人の現金決済好きが最大の理由と思います。
加えて、韓国等は、カード決済の場合は資金の流れがガラス張りになり、法人税のごまかしが出来なくなる点を国が評価し、優遇税率を用意している等の理由も大きいはずです。

■韓国のクレジットカード決済時の税優遇制度
・韓国では、事業者が現金売上を申告しない脱税行為が多発した為、
消費者の現金取引をクレジットカードへ誘導し、事業者の売上を透明化する仕組みとして、
1999年にクレジットカードの利用額に応じた所得税控除を導入。
1.30万円を上限に、カード年間利用額の20%の所得控除が可能
2.1,000円以上のカード利用で、当選金1億8千万円の宝くじに参加可能
3.年商240万円以上のショップは、カード取扱いを義務化
4.クレジットカード取引記録は、金融業協会から国税庁へオンライで常時提供される仕組み
この仕組み導入後、ITになじみが少ない高齢者もクレジットカード決済に移行が進み、
事業者の売上申告漏れも激減、最終的には国税徴収額が増加した好結果が報告されています。

このように、国が利用者やショップ事業者にキャッシュレス決済のメリットを制度として造って行かない限り、
クレジット端末機、電信費用、カード手数料の負担を
ショップに押し付けている日本の運用では、たとえポイント付与率を数倍に引き上げても、劇的な変化は困難のように考えられます。

国による変革への対応が期待されています。